「普通よりちょっと下」の村を出てから、歩くこと三時間。
筋肉自慢のゴリ太と、知恵袋の三蔵(さんぞう)の前に、ついにその姿が現れた。
山を越え、深い霧の森を抜けた先。
黄金色に輝くゲートが見えてくる。
そこが、投資家が最初に足を踏み入れる聖域「証券の村」だ。
ゴリ太は、マントの紐を締め直しながら聞いた。
「三蔵さんよぉ。この『証券の村』って、そんなにヤベェ場所なのか?」
三蔵は、古びた巻物を確認しながら答える。
「すべての伝説的投資家は、ここを産声とともに通り抜けた。証券口座を持たぬ者は、株という名の剣も持てず、配当という名の果実も得られぬ。つまり……ここを通らぬ者は、一生『搾取の森』を彷徨うことになるのじゃ。」
ゴリ太はゴクリと唾を飲み込んだ。
「なるほど。じゃあ、まずは軍資金をどっかで借りて……」
「待て待てぃ!!」
三蔵の杖がゴリ太の脳天を軽く叩く。
「えっ? なんで?」
「なぜお主は、ゲートをくぐる前に借金(レバレッジ)の沼に飛び込もうとするのじゃ。死ぬぞ。」
「いや、慣れてるんで。ラクダでも質に入れます?」
「ラクダを売るな! アンド借金に慣れるな! 投資の鉄則その一、『まずは自分自身のポケットマネーで始めよ』じゃ!」
門前の誘惑
村の入り口には、巨大な樫の木の看板が立っていた。
【証券の村:案内図】
- 株ギルド通り(猛者たちが集う取引所)
- 投資家広場(情報という名の噂が飛び交う場所)
- 口座受付の門(運命の選択所)
ゴリ太は目を輝かせ、鼻息を荒くする。
「おぉっ! 武器屋がいっぱいあるゲームの街みたいだ!」
「いいか、ゴリ太。この村には数多の『証券ギルド』がある。それぞれ特徴が違うのじゃ。【手数料】という名の通行料、【使いやすさ】という名の操作性、そして【サービス】という名の恩恵……。どれを選ぶかで、お前の旅の難易度が変わる。」
ゴリ太は拳を突き出した。
「最強の武器を選びますよ! 楽しみだなぁ!」
「……その前に、まずは修行(勉強)じゃな。」
「えっ。……俺、勉強すると知恵熱で気絶する体質なんですけど。」
「投資は勉強せずに挑めば、それはただの『追い剥ぎ』に遭いに行くだけだ。ギャンブルと投資を履き違えるな。」
「……今までずっと、追い剥ぎ(大負け)に遭ってました。」
「それは投資ではない、ただの『寄付』じゃ。」
猛者たちの勧誘
村の正門をくぐると、そこには圧倒されるほどの看板がひしめき合っていた。
- 蒼き巨塔:SBI証券
- 紅の市場:楽天証券
- 新緑の知恵:マネックス証券
- 伝統の殿堂:野村証券
「うわぁ! なんだよ、この数は! どこもかしこも『うちが一番』って顔してるぞ!」
ゴリ太が圧倒されていると、三蔵が不敵に笑った。
「ワシは長い旅路の中で、あらゆるギルドを見てきた。だが……初心者が最短ルートで『富の神殿』へ辿り着くための場所は、実のところ絞られておる。」
「えっ! どこなんですか、三蔵さん! 早く教えてくださいよ!」
その時、周囲の商人たちが一斉に二人を取り囲んだ。
「そこの旦那! うちなら取引手数料は実質ゼロだ!」
「ポイントで株が買えるのはうちだけだよ!」
「歴史と信頼なら、こちらの窓口へ!」
「わわわ! みんな言ってること違うし、なんかキラキラしてて眩しい!」
混乱するゴリ太の肩を、三蔵がガシッと掴んだ。
「落ち着け、ゴリ太。これからお主に、迷いを断ち切る『3つの鍵』を授ける。これさえあれば、どの門を叩くべきか自ずと見えるはずじゃ。」
「早くその『3つの鍵』ってやつ、教えてくれよ! 勧誘の声がうるさくて頭が割れそうだ!」
ゴリ太は、四方八方から差し出されるパンフレットを振り払いながら叫んだ。
三蔵は騒がしい広場を抜け、少し落ち着いた噴水の前で足を止めると、ゆっくりと指を三本立てた。
「いいか、ゴリ太。証券会社という名のギルドを選ぶ基準は、この3つに集約される。これぞ『最短ルートを切り拓く三種の神器』じゃ。」
第1の鍵:【手数料】という名の通行料
「まず1つ目。取引をするたびに引かれる『手数料』じゃ。昔は村の大きな館(店舗)へ行き、重い扉を開けて人に頼むのが主流じゃったが、それには高い人件費という通行料がかかった。しかし、今は『ネット証券』という魔法の窓口がある。ここを選べば、通行料は限りなくゼロに近づく。」
「ゼロ! 良い響きだ。タダより安いものはないな!」
第2の鍵:【使い勝手】という名の武器の重さ
「2つ目は、道具の扱いやすさじゃ。いくら強力な剣でも、重すぎて振れねば意味がない。スマホの画面一つで、いつでもどこでも、直感的に操作できるギルドを選べ。ストレスは投資家の最大の敵。迷わず注文が出せる『使い勝手』こそが、お前の命を守る盾となる。」
第3の鍵:【連携】という名の兵糧(ひょうろう)
「最後は、お主の生活との結びつきじゃ。買い物で貯まるポイントで株が買えたり、銀行の預金と自動で繋がったりする『連携の力』。これを味方につければ、歩いているだけで勝手に経験値(資産)が貯まっていく仕組みが作れる。」
ゴリ太は腕組みをして、並び立つ看板を凝視した。
「なるほど……。手数料が安くて、スマホで楽に使えて、ポイントとかの相性が良い場所……。でも三蔵、結局どれが一番なんだ? 候補が多すぎて、まだ目が回るぜ。」
三蔵はニヤリと笑い、スマホのような形をした水晶板を取り出した。
「今の時代、この村の二大巨頭といえば、『蒼き巨塔(SBI証券)』と『紅の市場(楽天証券)』じゃ。このどちらかを選んでおけば、まず大怪我はせん。蒼き巨塔は圧倒的な商品数と手数料の安さ、紅の市場はポイントという名の兵糧がザクザク貯まるのが強みじゃな。」
「よし、決めた! 俺は……」
ゴリ太がどちらかの門へ駆けだそうとしたその時、背後から怪しげな影が近づいてきた。
「……ヒッヒッヒ。そこの威勢のいい兄ちゃん。そんな地味な場所より、もっと手っ取り早く『一攫千金』ができる秘密の裏路地があるんだが、興味はないかね?」
影は、ギラギラと怪しく光る「レバレッジ100倍」と書かれた看板を抱えていた。
「えっ、一攫千金!? 裏路地!?」 ゴリ太の耳がピクリと動く。
「待て、ゴリ太! それは初心者を一瞬で全滅させる『破滅の崖』だ!」
三蔵の警告は間に合うのか?
